一人麻雀における和了確率を書き下す(3)
はじめに
これまで2回にわたって一人麻雀における和了確率を求めてきましたが、そこで扱ったのはそれぞれ一向聴と二向聴の手でした。今回は前回記事の最後で触れた一般の向聴の手を扱います。前回も述べたように行列を使った解法が見通しがよいので今回もそれを踏襲します。
問題
向聴の手があってこのときの有効牌の枚数を枚、向聴のときの有効牌の枚数を枚、以降同様に定め聴牌のときの有効牌の枚数を枚とする。はじめ()に枚の牌があるとして巡目に和了している確率を求めよ。ただし一度捨てた牌は再び山に戻すという復元抽出を想定する。
解法
巡目に向聴である確率を、巡目に向聴である確率を、以降同様に定め巡目に和了している確率をとする。また表記を簡単にするため有効牌を引かない確率としてを導入する。これらは以下の連立確率漸化式に従う。
(1)式を形式的に解くと
が得られるからを求めることにする。を除いた(1)式を行列を使って書き直す。
とすると
となる。(5)式を解くと
となるからを求めればよい。ここでの固有値はすべて異なるからは対角化可能である。のように対角化できるとするとである。よって適当な係数を定めればは
と表せる。この係数を初期条件
によって定める。これは
と表せる。(9)式の行列はヴァンデルモンド行列でありと表すことにする。ヴァンデルモンド行列式は
である。これとクラメルの公式を使って係数は
と表せる。は余因子展開を使えば
と書ける。よって(11)式は
となる。(8)式(13)式を(7)式に代入して整理すると
(14)式を(2)式に代入して計算するとは
となり解を得る。なお(15)式においてとなるため(2)式のの範囲の制限を削除した。
補足
対称性
任意のの置換に対して(14)式(15)式は不変である。
証明
と表すことにすると以下より成り立つ。